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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第10章 第三話 【白妙菊の約束】其の参
そんなある日の朝、庭で言い争う幼い少女たちの声がふとお逸の耳に入った。
「この花入れは、東雲花魁が大切になさっているお品でありんす。それをよくもこんなに滅茶苦茶に致しんしたな」
まだ馴染まぬ廓言葉で相手を詰っているのは、紛れもなく引っ込み禿の紫乃だ。引っ込み禿はむろん、お職を張る花魁東雲付きとなっていた。将来の花魁候補ゆえ、花魁に預けてその身の回りの世話をして花魁に仕えながら、行儀作法や心得を身につけてゆくのだ。
「この花入れは、東雲花魁が大切になさっているお品でありんす。それをよくもこんなに滅茶苦茶に致しんしたな」
まだ馴染まぬ廓言葉で相手を詰っているのは、紛れもなく引っ込み禿の紫乃だ。引っ込み禿はむろん、お職を張る花魁東雲付きとなっていた。将来の花魁候補ゆえ、花魁に預けてその身の回りの世話をして花魁に仕えながら、行儀作法や心得を身につけてゆくのだ。