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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第10章 第三話 【白妙菊の約束】其の参 
 しかしながら、紫乃の少し上向き気味の切れ長の眼は憤りを滲ませていて、可愛らしい面が夜叉のように歪んでいる。それは、以前、松風が花乃屋にいた時分の東雲が時折見せた顔に酷似していた。
 松風が身請けされ妓楼からいなくなった今でこそ別人のように優しくなった東雲だが、かつて松風と花乃屋の売れっ妓の地位を争っていた頃は―もっとも、当時、松風の方は東雲からの敵意むき出しの視線も柳に風と受け流し、鷹揚に構えていた―、お逸にも何かにつけ辛く当たることが多かった。
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