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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第13章 第四話【恋月夜】 其の参
佳乃―、そんな名前、聞いたことがない。
―私は、そんな名前じゃない。おとっつぁんが付けてくれたお逸という、ちゃんとした名前がある。
お逸は絶望的な想いで、優しげな笑みを浮かべる男を見つめた。
「さあ、佳乃や」
刹那、何もかもがどうでもよくなった。自分をどうしてここまで嬲り、いたぶろうとするのか理解できないこの男も、忘れようとしてもけして忘れ得ない恋しい男の存在も。すべてがどうでも良い、取るに足りないことのように思えて、お逸は半ば自棄になった。
―私は、そんな名前じゃない。おとっつぁんが付けてくれたお逸という、ちゃんとした名前がある。
お逸は絶望的な想いで、優しげな笑みを浮かべる男を見つめた。
「さあ、佳乃や」
刹那、何もかもがどうでもよくなった。自分をどうしてここまで嬲り、いたぶろうとするのか理解できないこの男も、忘れようとしてもけして忘れ得ない恋しい男の存在も。すべてがどうでも良い、取るに足りないことのように思えて、お逸は半ば自棄になった。