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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第13章 第四話【恋月夜】 其の参

お逸はゆるゆると視線を動かす。
墨を溶き流したような漆黒の空に浮かぶのは、わずかに欠けた月。今を盛りと咲き誇る桜花が月光を浴び、雲母(きらら)に光って見える。それは、さながら蒔絵細工に施された螺鈿の花のようにも見えた。
「久方の天つみ空に照る月の 失せむ日にこそ わが恋止まぬ」
お逸の唇からか細い声が呟きとなって零れ落ちる。小さな呟きは春の夜風に乗り、花びらのように夜空を漂い、儚く溶けて散る。
墨を溶き流したような漆黒の空に浮かぶのは、わずかに欠けた月。今を盛りと咲き誇る桜花が月光を浴び、雲母(きらら)に光って見える。それは、さながら蒔絵細工に施された螺鈿の花のようにも見えた。
「久方の天つみ空に照る月の 失せむ日にこそ わが恋止まぬ」
お逸の唇からか細い声が呟きとなって零れ落ちる。小さな呟きは春の夜風に乗り、花びらのように夜空を漂い、儚く溶けて散る。

