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夢で逢えたなら~後宮秘談【怨のものがたり~朝鮮王朝後宮譚改題
第6章 鷺草~真実の愛~
それはほんのひと刹那だったので、百花は自分の思い違いではないかと思ったほどである。
現(うつつ)に返った時、既に王の姿はそこにはなく、数人の内官を従えて廊下の角を回って消えてゆく後ろ姿が小さく見えるだけになっていた。
百花は王から咄嗟に手渡された鷺草を握りしめ、その場に立ち尽くした。
そういえばと、百花はぼんやりと思い出していた。
あれは確か、初夜を迎えてひと月ほど経った夜のことだった。