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森の中
第8章 8 街の中
 師走に入り、瑠美と二度会い、逢瀬を重ねた。そして彼女はしばらく来ないと言い、年が明けた。
 年末年始は忙しいかゆっくりしているかのどちらかだろうと思い、それほど気にせずに時間をつぶした。
 今夜は岸本健吉と出かける。
 行先は隣の市のピンサロだ。病院での話は本気だったらしい。一応大事をとって本当はソープに行きたいらしいがピンサロで軽く遊ぶつもりらしい。冬樹も『おごる』と言った手前、少し面倒だったが付き合うことにした。

 妻の真由子が死んで三年はストイックな生活を送った。しかしおせっかいな岸本健吉が再婚を促した。一人息子の佳彦でさえ勧めた。
 それ程、冬樹は妻の死にダメージを受け、人を避け、山にこもっていたからだった。真由子より惹かれる女は出てこないのがわかっていたが引き籠った大人げない自分にもうんざりし始めていたのでまだ三十代前半の冬樹は合コンやパーティに付き合った。

 冬樹と寝てから結婚を迫る女も多かったが、林業の厳しさ、主に収入面の話をすると去って行った。しばらくそうやって時間をつぶして過ごした。たとえ特定の女と付き合っていなくても外にさえ出ていれば周りの人間は心配しなくなるようで、それが分かってから冬樹は風俗に出かけるようになった。

 素人を相手にすると面倒だがプロは楽だ。しかし心から愉しんだ時は一度もなかった。
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