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降りしきる黄金の雫は
第16章 16 結実
目覚めると真っ白い無機質な天井が見えた。

「えっ!? どうして?」

がばっと起き上がると、ドアがカチャリと開く音が聞こえ、岡田先輩が「芳樹!」と駆け込んできた。

「え? 先輩、ここは?」
「よかった。意識が戻って」

どうやら病院のようだ。僕は生きているのか。

「なんか昨日胸騒ぎがして、夜中にお前んち行ったんだ。そしたら扉が全開でお前は気絶してた」

先輩は鼻を啜って続きを話す。

「お前はベッドの上で金木犀の花に埋もれてたんだ。びっくりしたよ。そうそう胸騒ぎっていうのは、なぜか金木犀の香りがしてからなんだ」

桂さんが先輩に知らせたのだ。桂さんはどうしているだろう?

「先輩、庭の金木犀はどうなってました?」
「ああ、それが、慌ててたからちょっと良く見てないんだが倒れてたようだった」
「えっ!」

僕は慌ててベッドから起き出し、腕から点滴を引きちぎった。

「何するんだっ!よせっ!」
「放してください! 家に帰らないと!」
「待てっ!」

強くつかまれた腕を引き離そうとすると先輩は僕を抱きしめ逃れられないように固める。

「お願いです。お願いです。一度でいいから帰らせてください」

泣きながら懇願すると「わかった」と放してくれたが「俺も一緒だ」と僕を抱いて、病院を連れ出した。


車を降り、急いで庭に向かうと、そこには無残な金木犀の姿があった。

「あ、あぁ――うあぁぁぁ――」

根元からバッサリと折れている。しかも緑色のつやつやした硬い葉はすべて茶色になって枯れており、幹も虫に喰われたようにスカスカになっている。

「も、もう。これじゃ――元に戻らない」
「芳樹……」

桂さんは逝ってしまった。僕を残して。
しばらく泣いて呆然と木の根元にいると、先輩が何かをつまんで持ってきた。

「芳樹、ほら、これ。そこに落ちてたぞ」

手のひらに小さな実を乗せられる。

「え、これって……」

実物を初めて見る。金木犀の実だ。薄緑で大きさはグミくらいだ。これは僕らの実だろうか、それとも桂さんの生まれ変わりなのだろうか。
大事に撫でていると、先輩が「とりあえず病院に戻ろう」と僕の肩を抱いた。
僕は壊れもののようにそっと手の中に実を包み「桂さん、また後で来ます」と告げ、車に乗った。
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