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ペリドット
第1章 台風9号が直撃する夜。
『第1話:ウチで一緒にどうですか?』
8/10 -Mon-
【大型台風9号は11日の明け方に関東地方を直撃――】
定刻通りに仕事を終え、脇目も振らずに家へ帰り着き、テレビをつけると神経質そうな顔立ちのアナウンサーが、そう僕に語り掛けてきた。
そうか、そう言えば今朝のニュースで台風が沖縄に上陸すると言っていたなと、薄い記憶が頭を過ぎる。
窓から外を眺めると、もう雨が降り始めていた。風は強かったが、僕は運良く雨からは免れる事が出来た様だ。
しかし、家には空腹を満たす食材が無かった。一度家に帰り着いてから、雨風の中コンビニやスーパーに行くのは少し億劫になってしまう。
少し高くつくがピザでも頼むかと思い、白いソファに散乱したチラシを漁っていると、室内に「ピーンポーン」と鳴り響いた。
こんな時間に我が家の呼び鈴を鳴らすのは、しつこい新聞屋か聞いたことも無い新興宗教の勧誘だろうと半ば決め付けて、一度目は軽く無視をした。
引き続き、チラシを漁っていると、直ぐに二度目の呼び鈴が鳴り響く。しかし、大体二回無視すれば次の部屋へと移ってくれると、過去の経験から心得ていたので、今回も軽くシカトをする。
雨はどんどんと強く降り出していた。風も幾分強くなった様に感じる。僕の家の網戸は固定されておらず、大風になると激しく左右に行き来して大きな音を立てるのだ。
今回も多分そうなるのだろう。
明け方にその音で起こされるのは勘弁して欲しいのだが、それはそれで夏の風物詩かと思える事もあり、この部屋に住んでもう六年になるのだが、未だに一度も直そうと試みた事も無い。
それから暫く、呼び鈴は鳴らなかった。やはり二回で諦めて次の部屋へと移ったか、今夜は雨風が強いのでもう家路についてしまったのかもしれない。
8/10 -Mon-
【大型台風9号は11日の明け方に関東地方を直撃――】
定刻通りに仕事を終え、脇目も振らずに家へ帰り着き、テレビをつけると神経質そうな顔立ちのアナウンサーが、そう僕に語り掛けてきた。
そうか、そう言えば今朝のニュースで台風が沖縄に上陸すると言っていたなと、薄い記憶が頭を過ぎる。
窓から外を眺めると、もう雨が降り始めていた。風は強かったが、僕は運良く雨からは免れる事が出来た様だ。
しかし、家には空腹を満たす食材が無かった。一度家に帰り着いてから、雨風の中コンビニやスーパーに行くのは少し億劫になってしまう。
少し高くつくがピザでも頼むかと思い、白いソファに散乱したチラシを漁っていると、室内に「ピーンポーン」と鳴り響いた。
こんな時間に我が家の呼び鈴を鳴らすのは、しつこい新聞屋か聞いたことも無い新興宗教の勧誘だろうと半ば決め付けて、一度目は軽く無視をした。
引き続き、チラシを漁っていると、直ぐに二度目の呼び鈴が鳴り響く。しかし、大体二回無視すれば次の部屋へと移ってくれると、過去の経験から心得ていたので、今回も軽くシカトをする。
雨はどんどんと強く降り出していた。風も幾分強くなった様に感じる。僕の家の網戸は固定されておらず、大風になると激しく左右に行き来して大きな音を立てるのだ。
今回も多分そうなるのだろう。
明け方にその音で起こされるのは勘弁して欲しいのだが、それはそれで夏の風物詩かと思える事もあり、この部屋に住んでもう六年になるのだが、未だに一度も直そうと試みた事も無い。
それから暫く、呼び鈴は鳴らなかった。やはり二回で諦めて次の部屋へと移ったか、今夜は雨風が強いのでもう家路についてしまったのかもしれない。