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第1章 Ｍｙｓｔｅｒｉｏｕｓ　ｍｏｒｍｅｎｔ～不思議な力に誘われて～

　母は化粧品のセールスレディをしながら女手一つで藍那を育ててくれた。藍那にとっては、遠い昔、母とまだ二歳だった自分を棄てた薄情な父は家族ではなかった。家族と呼べるのは亡くなった沖縄の祖母と母だけだ。
　今年は二年ぶりに沖縄に帰るというので、藍那は休みに入る前から愉しみにしていた。その待ちに待った三日間の滞在期間も瞬く間に過ぎ去り、藍那はまたこの街に戻ってきた。北の地方都市にすぎず、都会でもなく田舎ともいえない、極めて中途半端なこの故郷に。