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第16章 ＶＲ世界でＲＰＧ　女戦士？久美子

『…ちょっと頼みがあるんだけど…』から始まる工場長の久美子へのお願いは、ろくなものであった試しが無い。

『…嫌ですよッ』
にべもなく断る久美子だが、『そんな事言わずに頼むよ〜、久美子くんにしか頼めないんだよ〜』泣きそうな顔で情けなく両手を合わせて拝んでくる工場長の姿と『特別ボーナスも弾むからさぁ〜』の言葉に、『何なんですか今度は〜』と情に、或いは特別ボーナスにほだされ、話を聴いてしまう我が妻久美子。

『いやいや今度のはエッチな話じゃないんだけど…』工場長の言葉に『じゃあ私じゃなくてもいいじゃないですか』即答する久美子だったが、以前お世話になった社長のご指名とやらで、断われないらしい。

大人になると、鬱陶しいしがらみでがんじがらめ、自由には生きていけないのよね、恨めしい。

『ヴァーチャルリアリティーのゲームソフトを開発している会社なんだけど…ソフト開発の為のモニターを探しているらしくてね』工場長の言葉に、ますます自分には関係ないと感じてしまう久美子だったが、いつものように『特別ボーナス弾むからさ、本当頼むよ！』の工場長の言葉に、押し切られてしまう久美子であった。

そんな感じで久美子が訪れたソフトウェア開発会社だったが、外見は普通のビルとなんら変わらない印象。
受付の女子社員も、出迎えた開発社員もいたって普通。
拍子抜けする久美子であった。
が、案内された研究室はいかにもといった感じで謎の機械が所狭しと設置され、中央には一目で被験者の為であろうと分かるスペースがある。

かくして久美子は戦闘機のパイロットの被るようなヘルメットとゴーグルを足して２で割ったような機械を頭に装着。
身体の各所にはコード、下半身には貞操帯のような大袈裟な装置をつけられ、部屋の真ん中に立っていた。

(それでは早速始めましょうか)
久美子のベッドギアに開発者の声が聞こえる。
が、どういう仕組みなのか、まるで直接脳内に響いているような不思議な感覚だ。
(まずは順序通りゲームスタートの場面からいきましょうか)
開発者がそう説明すると、ファンファーレのような音楽が鳴り響き、老人の声で『この世界へようこそ。汝の名前と、職業を教えてもらおう』おごそかなメッセージが聴こえる。
ゲームに疎く、面倒臭がりな久美子は、名前はそのまま久美子、職業は一番最初にあった戦士にしてゲームをスタートさせる。