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乳房星(再リフォーム版)
第83章 淋しい熱帯魚・その2
事件は、9月8日の午後12時を15分過ぎた頃に発生した。

たつろうさんの実家の大広間のテーブルに7~8人の男性従業員さんたちが食べる給食サービスのお弁当がならんでいる。

しかし、12時を過ぎているのに彼らがいないので政子がひどくおたついた。

そこへ、地区の酒屋さんで働いているしゅうちゃん(31歳)が自転車に乗って家の前にやって来た。

「ちわーす。」
「ああ、壬生川屋のしゅうちゃん!!」
「奧さん、どないしたねん?」
「しゅうちゃん大変よ!!大至急社長さんに電話して!!」
「ああ、ちょうどよかったわ…オレ、きょうはオヤジにおらばれてムシャクシャしてはるけん(印刷工場)の社長につげくちしようと思とったねん。」
「えっ、どう言うことなの?」
「あのねぇ、ここで弁当食べてた彼らが(機械工の主任)さんの婚約者の(花屋の店員の女性)さんのもとに行って、彼女が作って食べる弁当をパクりよったよ…ほんで、彼女に『部屋に遊びに行ってもいい?』と軽々しくいよったよ。」

しゅうちゃんからことの次第を聞いた政子は、顔が真っ青になった。

「しゅうちゃん、それホンマのこと!?」
「ホンマにホンマや…(印刷工場)の社長さんは名誉市民に選ばれたとたんに鼻がテングになってはるよねぇ…サイアクっすね。」
「しゅうちゃん!!いくらなんでもそれは言い過ぎよ!!」
「せやかて、ホンマのことやもん…社長さんを名誉市民に選んだ市長もサイテーやわ…」
「しゅうちゃんやめて!!」
「あっ、オレ配達の途中だった…ほな、しゃいなら…あー、すっきりしたわ…」

しゅうちゃんは、自転車に乗ったあと口笛をふきながらその場から立ち去った。

しゅうちゃんのつげぐちを聞いた政子は、その場に座り込んで全身を震わせた。

しゅうちゃんは、このあと地区中の人たちにところかまわずに言いふらしたので、騒ぎが拡大した。

騒ぎの原因を作った彼らは、より重いツケを背負うだろう。
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