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乳房星(再リフォーム版)
第1章 遠くへ行きたい
(ドザーッ、ドザーッ、ドザーッ…)

時は、午後1時過ぎのことであった…

ところ変わって、越智郡玉川町の鈍川温泉郷にて…

温泉街からうんと離れた料亭で、恐ろしい事件が発生した。

この付近でも、雷を伴って1時間に80ミリ以上のし烈な雨が降っていた…

おそろしい事件は、料亭内の大広間で発生した。

この時、結婚披露宴が執りおこなわれる予定であった。

しかし、新郎さんがやくざがらみのもめ事を起こしていたことが原因で、おめでたい宴はシュラバと化した。

やくざの男たち50人が大広間に押しかけて来た。

(ズドーン!!ズドーン!!ギャーッ!!)

料亭内の大広間で、やくざの男がハッポウした拳銃の銃声と親族たちのけたたましい悲鳴が響いた。

そんな中で、純白の文金高島田姿の花嫁さんが50人の子守女さんたちに守られて料亭から出てきた。

彼女は、50人の子守女さんたちと一緒に現場から300メートル先に停車している白のニッサンキャラバン(ワゴン車)へ向かった…

花嫁さんは、私の実母のきょうこ(26歳)である。

実母は、胎内に私・イワマツを宿している。

「時間がないわよ!!急いで!!」

ワゴン車に乗っている女性は、花嫁姿の実母を守っている子守女さんたちに呼びかける。

子守女さんたちに呼びかけている女性は、波止浜の母子保護施設の施設長さんの里崎眞規子(28歳)である。

実母は、子守女さんたちの助けを借りてワゴン車に乗り込む。

「大丈夫?」
「くすんくすんくすん…」

ワゴン車に乗り込んだ実母は、施設長さんに抱きついてくすんくすんくすんと泣いている。

(ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!)

この時、遠くでより強烈なブザー音が聞こえた。

玉川ダムのダム湖の上流で、一気に200ミリのし烈な雨が降った。

ブザー音は、ダムが緊急操作開始を知らせる合図である。

この時、実母と施設長さんが乗っているワゴン車の前に停まっている黒のニッサンパッカードの後ろの席の窓から、焼きソバヘアで黒のサングラスの男が顔を出して、子守女さんたちに呼びかけた。

男は、南予の喜多郡の薬問屋『溝端屋』の番頭はん・竹宮豊国である。
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