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籠の中の天使
第8章 楽しかった?



「行こう…。」


南斗の手を引いて、この街から出たいと示す。


「んじゃ、また…。」


南斗だけが丁寧にお母さんや周囲の女将さん達に頭を下げる。

早く逃げたい私は南斗が車を停めた駐車場まで急ぎ足で進む。

車に乗り込めば南斗が


「少しでもいいから、おばさんに笑顔を見せてやれよ。おばさんだって咲都子の事、毎日心配してんだからさ。」


と態度の悪い私を嗜める。


「笑える訳ないじゃんっ!」


あんな街のど真ん中で笑える女の子が居るはずない。


「咲都子…。」

「大っ嫌いっ!あんな街…、こんな昼間っからSEXしてますって下品な街…。」


言っちゃいけないとわかってる。

それは南斗もわかってるから


「咲都子っ!」


と語気を荒げて来る。

だけど一度吹き出した不満は止まらない。


「あんな街、滅びちゃえばいいんだよ。」


怒りに任せて叫んでた。

自分が最低だとわかってる。

私は醜い野獣になって、あの街を攻撃してる。

岡村さんや峯岸君と同じだ。

自分が気に入らないからと平気で人を傷付けてる。

私を心配してるお母さんを傷付ける発言をしてしまう。


「咲都子…。」


南斗が私を引き寄せて抱き締める。


「それでも、あの街は俺と咲都子が生まれた街だ。」


辛そうな南斗の言葉が私の胸に突き刺さる。


「ごめんなさい…、ごめんなさい…。」


野獣になった自分に恥じて泣く。

私なんか居なくなればいい…。

きっとお母さん達もそう思ってる。

籠娘は醜い子だからと私は自分で自分の心を傷付ける。


「自分を責めるな。それが一番良くないって北斗が言ってたろ?」


南斗は私を甘やかす。

私が泣き止むまで、ずっと抱き締めたまま優しく頭を撫でてくれる。

私は南斗を失えば生きていけない。

南斗は私が居なくなったら、どうするのだろう?

この世から醜い自分を消してしまいたいと願う私を留まらせようと必死になる南斗に抱き締められて動けないままだった。


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