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籠の中の天使
第12章 明けない夜
誰もが私とノアを振り返る。
原因は明らかに私じゃない。
隣に並んで歩くノアをそっと見上げれば、その存在感の大きさを改めて感じさせられるだけだ。
「何?」
のんびりとノアが聞いて来る。
「なんでも…無い…。」
「嘘だ…、ずっと俺を見てるじゃん。」
「だって…、目立つから…。」
私みたいなちっぽけな女の子だとノアと並んで歩くには不釣り合いだと思うから少し恥ずかしい。
「今時、ハーフやクオーターなんか珍しくないだろ?」
ノアが少し不機嫌な表情をするから、変な事を言ったのかと気にしてしまう。
「ノア…さんはハーフ?」
「ノアでいいよ。俺の場合はクオーター…、日本名はあるけど、余り使ってないから…。」
「名前が2つあるの?」
「苗字が2つ、名前は玲夜(れいや)、海外用だとレイヤ・ノアって感じになる。」
「苗字が2つもあるって凄いね。」
「別に凄くもないよ。」
知らない人なのに…。
普通に話せる人…。
ノアから受ける印象は恐怖よりも安心感がある。
歩く速度を私に合わせ、常に車道側へ回り込んでくれる男の人って初めて見た。
「お兄ちゃん、でけーな。なんかスポーツの人かー?」
酔っ払いがノアに絡んでも、ノアは
「何にもしてないよ。お兄さんも気を付けて帰りなよ。」
と笑顔で答えて酔っ払いから私を隠すようにして歩き、私を守ろうとしてくれる。
「変な街…。」
ノアがクスクスと笑う。
「そう…、かな…。」
「俺からすればそうだよ。他人を引き込もうとする街のくせに、何処かで他人を拒絶してる。」
「旧いままだからね。閉鎖的で何も無い街だよ。」
ノアが与えてくれる安心感から、つい本音が出ちゃう。