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きっかけは十人十色
第1章 母親からの着信
風呂から上がって、濡れた髪をタオルで拭きながら火照った身体を冷まそうと冷蔵庫から麦茶を取り出した時のことだ。
テーブルの上に置いておいた携帯の振動音が響いた。
あ、バイブのままにしてたな、なんて思ったのだが、それにしては音が長い。メッセージ受信じゃない。電話だ。
画面を見ると母親からだった。ロクな用事ではなさそうな予感がしつつ、通話ボタンをタップした。
「もしもし?」
『あー、もう!やっと出たわね』
急にかけてきておいてなんだよ。用件じゃなくて文句が先か。
「風呂入ってたんだよ。で、何かあったの?」
『あらやだわー、裸じゃないでしょうね』
やめてくれよ。息子の裸なんて想像しないで欲しい。
「…着替え終わってるよ。それで?何か用事があったんじゃないの?」
『あぁ、そうそう。あんたさ、ちょっと前に彼女に振られたって言ってたでしょ』
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