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Honeymoon
第10章 いくつかの誤解
カフェを出てタクシーに乗っても私は言葉少なに和泉さんの話に相槌を打っていた。
もう全てが終わる、その事実に対峙するなけなしの勇気を振り絞っていた。
そして車が止まった場所。
閑静な住宅街の中のマンション。
中層階のその瀟洒な建物を思わず見上げてしまった。
「ここ……は」
「俺の私室。 会社からそう離れてないからバタバタしてる時によく使ってる。 まあ、何にもないけどね」
マンションのエレベーターで押したのはやはり6階。
心臓がドクドクと脈を打っていた。
だってここは。
遥さんの……私が遥さんと過ごした場所だ。
訳が分からなかった。
だけどもうすぐそれもどうでも良い事になる。
「和泉さん」
エレベーターの中の自分の声が不自然に響いた気がした。
「何?」
薄いコートの下に着ていたワンピースのボタンをいくつか開けて左右に開いた。
胸元にあるいくつもの、赤い痕。
遥さんにあの夜付けられた。
彼がわざとこうしたのだと分かっていた。
「……………」
「ごめんなさい。 私、和泉さんと結婚は出来ません」
そう告白した時彼の顔を見れなかった。
落胆、私への失望。目を閉じてそんな彼を待った。
けれど和泉さんが取った行動は意外なものだった。
その階に到着するかしないか、急に強く腕を引かれて体のバランスを崩す。
「和泉さん? ……和泉さん、ごめんなさい!」
もう全てが終わる、その事実に対峙するなけなしの勇気を振り絞っていた。
そして車が止まった場所。
閑静な住宅街の中のマンション。
中層階のその瀟洒な建物を思わず見上げてしまった。
「ここ……は」
「俺の私室。 会社からそう離れてないからバタバタしてる時によく使ってる。 まあ、何にもないけどね」
マンションのエレベーターで押したのはやはり6階。
心臓がドクドクと脈を打っていた。
だってここは。
遥さんの……私が遥さんと過ごした場所だ。
訳が分からなかった。
だけどもうすぐそれもどうでも良い事になる。
「和泉さん」
エレベーターの中の自分の声が不自然に響いた気がした。
「何?」
薄いコートの下に着ていたワンピースのボタンをいくつか開けて左右に開いた。
胸元にあるいくつもの、赤い痕。
遥さんにあの夜付けられた。
彼がわざとこうしたのだと分かっていた。
「……………」
「ごめんなさい。 私、和泉さんと結婚は出来ません」
そう告白した時彼の顔を見れなかった。
落胆、私への失望。目を閉じてそんな彼を待った。
けれど和泉さんが取った行動は意外なものだった。
その階に到着するかしないか、急に強く腕を引かれて体のバランスを崩す。
「和泉さん? ……和泉さん、ごめんなさい!」