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Honeymoon
第4章 一夜 …恐れと嗜虐
社内のエレベーターホールで和泉さんと一緒になったのは偶然だった。
大企業とは言わないまでも、そこそこ安定性のある少し名前の知れた会社。
私は経理部の会計課に配属されていた。
ビルのエントランスから続く6基しかないエレベーターホールは毎朝出勤者で列を成す。
私が乗るのは奥にある高層階行き。
そこでいつも見掛ける和泉さんと待っている間に話すようになった。
そして列に並んでいる時に、前にいた和泉さんが後ろを振り返るようになり。
私を見付けるとわざわざ私のすぐ後ろに並び直すのだ。
何のドラマチックな展開も無かったけれど、そんな彼を好ましく思っていた。
私より7歳年上である事。
独身である事。
私の中の和泉さんに対する引き出しが増えていった。
広報部に所属する彼は出張も多くその度に毎朝お土産の袋を抱えていた。
「旭ちゃん、お土産のすだち飴いる?」
いつしか私の苗字の『早瀬』から名前呼びに変わっていた。
「今回の出張先は高知だったんですか?」
「当たり」
和泉さんは微笑んで床に置いた袋に屈みローカルなお土産を頻繁に私にくれた。
そして顔を上げた時に鼻まで下がった眼鏡を上げる。
そんな時、彼の短い髪に触れたくなった。
そうやっていつものようにホールでごそごそと紙袋を彼が探っていたある日、誘われた。
「今度一緒に晩ごはんに行かない?」
「……はい」
少し間を置いて返事をした。
間が空いたのは、単に嬉しくて信じられなかったから。
その後でやっと上体を起こした和泉さん。
眼鏡が下がり過ぎて落とし掛け、慌ててた。
大企業とは言わないまでも、そこそこ安定性のある少し名前の知れた会社。
私は経理部の会計課に配属されていた。
ビルのエントランスから続く6基しかないエレベーターホールは毎朝出勤者で列を成す。
私が乗るのは奥にある高層階行き。
そこでいつも見掛ける和泉さんと待っている間に話すようになった。
そして列に並んでいる時に、前にいた和泉さんが後ろを振り返るようになり。
私を見付けるとわざわざ私のすぐ後ろに並び直すのだ。
何のドラマチックな展開も無かったけれど、そんな彼を好ましく思っていた。
私より7歳年上である事。
独身である事。
私の中の和泉さんに対する引き出しが増えていった。
広報部に所属する彼は出張も多くその度に毎朝お土産の袋を抱えていた。
「旭ちゃん、お土産のすだち飴いる?」
いつしか私の苗字の『早瀬』から名前呼びに変わっていた。
「今回の出張先は高知だったんですか?」
「当たり」
和泉さんは微笑んで床に置いた袋に屈みローカルなお土産を頻繁に私にくれた。
そして顔を上げた時に鼻まで下がった眼鏡を上げる。
そんな時、彼の短い髪に触れたくなった。
そうやっていつものようにホールでごそごそと紙袋を彼が探っていたある日、誘われた。
「今度一緒に晩ごはんに行かない?」
「……はい」
少し間を置いて返事をした。
間が空いたのは、単に嬉しくて信じられなかったから。
その後でやっと上体を起こした和泉さん。
眼鏡が下がり過ぎて落とし掛け、慌ててた。