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blossom
第1章 プロローグ:まなちゃんとりっくんのママ
「今日は当直だから」
トーストをかじりながら夫が言う。
「えー、カレンダーに書いてなかったじゃん?」
「悪い、忘れてたよ」
「献立とか考えてるんだから、そういうのは…」
既にテレビに目を向けて、私の言葉を聞き流している夫の背中に、私は残りの言葉を飲み込んだ。
仲が悪いという訳では無いと思っている。
最近は事務連絡のような会話ばかりだけれど、十分に事足りているし、特にギスギスしているわけでもない。
優しい人ではある。
一緒に買い物に行けば荷物は持ってくれるし、ゴミ捨ても文句言わずにやってくれる。
夫からの猛アピールから始まった私たちだけれど、今となっては寝室も別。
夫婦というよりは父母として繋がっている。
まなちゃんとりっくんのパパとママ。
今年四年生の下の子の妊娠が分かってからは、一度も夫婦の関係は持っていない。
もちろん女性として求められないことに寂しさを感じた時期も…なかった訳では無い。けれど、愛情の対象としては十分である子供たちの存在があったから、心は満たされていた。
子供たちは全力で私を必要としたし、私も全力でそれに応えてきた。
だからこそ、
私はこれまでずっと満たされて「いた」。
でも、子供たちの成長とともに自由な時間が増えて、少し退屈に感じる時間ができたからかもしれない。
仲のいいママ友たちがそんな時間を使って働き始めて、ランチに行く機会が以前より減ってしまったせいかもしれない。
いえ…言い訳はやめておこう…
きっかけは、ある日の一本の電話だった。
トーストをかじりながら夫が言う。
「えー、カレンダーに書いてなかったじゃん?」
「悪い、忘れてたよ」
「献立とか考えてるんだから、そういうのは…」
既にテレビに目を向けて、私の言葉を聞き流している夫の背中に、私は残りの言葉を飲み込んだ。
仲が悪いという訳では無いと思っている。
最近は事務連絡のような会話ばかりだけれど、十分に事足りているし、特にギスギスしているわけでもない。
優しい人ではある。
一緒に買い物に行けば荷物は持ってくれるし、ゴミ捨ても文句言わずにやってくれる。
夫からの猛アピールから始まった私たちだけれど、今となっては寝室も別。
夫婦というよりは父母として繋がっている。
まなちゃんとりっくんのパパとママ。
今年四年生の下の子の妊娠が分かってからは、一度も夫婦の関係は持っていない。
もちろん女性として求められないことに寂しさを感じた時期も…なかった訳では無い。けれど、愛情の対象としては十分である子供たちの存在があったから、心は満たされていた。
子供たちは全力で私を必要としたし、私も全力でそれに応えてきた。
だからこそ、
私はこれまでずっと満たされて「いた」。
でも、子供たちの成長とともに自由な時間が増えて、少し退屈に感じる時間ができたからかもしれない。
仲のいいママ友たちがそんな時間を使って働き始めて、ランチに行く機会が以前より減ってしまったせいかもしれない。
いえ…言い訳はやめておこう…
きっかけは、ある日の一本の電話だった。