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blossom
第23章 Love22 : 桂木さくらという女
しかし、中途半端にしか硬さを取り戻せなかったため、望みの場所への刺激は貰えなかった。

「ごめんね、さくら…」

「ううん、大丈夫」

(嘘…大丈夫じゃない。大丈夫な訳がない。)


私は自分に嘘をついて、まだ熱いままの身体を布地の中にしまい込んだ。

冴島さんに一瞬目を向けた私に気づいたのだろうか。夫はふぅっと短く息を吐いた。


少しの沈黙。


「先に子供たちのところに戻ってるよ」

夫はそれだけ言うと、私を置いて車の外に行ってしまった。すぐに姿は見えなくなった。


私は、どうしても冴島さんの方を見られない。

まだそこにいるのだろうか…。


その姿を目にしてしまったら…きっと欲しくて堪らなくなる。


(こんな私をまだ好きでいてくれる?)

(もしそこに居なかったら、もう二度と会って貰えないってことかもしれない。)



思い切って顔を向けると、冴島さんはじっと私を見ていてくれた。
ズキズキと痛むかのように私の奥深くが疼きだす。


どれくらい見つめ合っていたのだろう。


風に乗って桜の花びらが冴島さんのまわりを舞った。


冴島さんが一歩ずつ近づいてくる。
私も車のドアを開けて外に出ようとする。


ドアが開いた時には、冴島さんはすぐそこにいた。


言葉は何も無いまま、口づけを交わす。

互いの唾液が混ざりあって、化学反応しているかのように熱くなる。
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