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blossom
第23章 Love22 : 桂木さくらという女
自分の家の車の中での、冴島さんとの情事。
呆けてしまう程に熱かった。何より情熱的な冴島さんが堪らなかった。


プチュッ

さっきまで冴島さんのいた場所に力を入れると、その精子の存在を示すような音が聞こえた。

私の中で果ててくれた喜び。
これこそが女の悦びなのだろう。




駐車場を出て夫と子供たちのいる方へ向かって歩いて行く。

美しい桜並木では、風に吹かれて舞い落ちる花びらを捕まえようと小さな子供たちがはしゃいでいた。



ヒラリと舞う花びらに手を出してみると、静かに手のひらに落ちてきた。ゆっくりと指を閉じてその花びらを捕まえる。

母であり、妻であり、女である私は今、その全ての幸せを手にしている。


こんな形で幸せを感じている私も、夫に負けないくらい、きっと歪なのだろう。

いつまで続くかは分からないけれど、今はこの歪な幸せを満喫していたい。一度きりの人生を欲張って生きようと心に決めた。



指を広げて捕まえた花びらに息を吹きかけると、フワッと舞い上がった。地面に落ちるまでは見届けることなく、家族の元へと再び歩き始めた。



桜並木の向こうから愛花と陸人が競走するかのように走ってきていた。その後ろからはすべて分かっている夫がにこやかに歩いてくる。

「ママ、桜の妖精みたいだったよ」

「花びらがぶわーってなってて」

「ホントに?素敵!」

「パパがね、ママ、キレイだねって言ってたよ 」
陸人が内緒話をするようにこっそり教えてくれた。


追いついた夫は私の手をとり、まるで恋人たちのように指を絡めた。
「そろそろ帰ろう」

「うん」

両端に子供たちもついて、四人仲良く並んで桜並木を歩いた。
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