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月の姫~夢占(ゆめうら)の花嫁~
第14章 【王を導く娘~観相師】
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(本文から抜粋)
 次に明華が目覚めた時、明華は褥に横たわる彼の腕の中にいた。丁度、ヨン(燕海君)の腕に閉じ込められ眠っている体勢である。
 ヨンもまた完全に回復しているわけではないのだろう、寝息を立てていた。
 男性にしては長い睫が翳を落とす彼の顔は、本当に綺麗だ。明華は彼を起こさないように、眼を開き静かに彼の寝顔を見つめた。
 結婚もしていない男女が同衾するなんて、いつもの明華なら信じられないことだ。でも、今だけなら許されるかもしれないと思う。
 だって、これから観相師としての禁忌を犯そうとしている自分に未来はないかもしれない。ヨンの未来を変えれば、天罰が下るのは必定だ。その時、最悪、自分は生命を代償として差し出さなければならない。
 だとしたら、大好きな男と共にいられるのもあと少しだ。せめて今だけはヨンの腕の中で彼の綺麗な顔を眺めていたい。
 たとえ天命に逆らって、この身が現世(うつしよ)から消えてしまうその瞬間でも、彼の綺麗な顔を覚えておけるように。秀でた額も整った鼻筋も、引き締まった口許も、全部、全部、大好きな彼の顔を魂に刻み込んでおきたい。
 明華は甘えるように、ヨンの胸板に頬を押し当てる。
「殿下、大好きです」 
 この呟きも彼には聞こえないのが幸いだ。
 しかし、明華は知らなかった。この時、明華を腕に抱いた王が実はかすかに眼を開いていたのを。
 ヨンは政変が成功するまではけして明華への気持ちを伝えまいと決めていた。秘めていた胸の想いをついに明華に伝えてしまったーそのことで自分を責めていた。
 更に鋭い彼は、明華がまだ何かを隠していることを何とはなしに感じ取っていたのだ。
 うっすらと開いた彼の瞳には、紛うことなく気遣わしげな色があった。

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