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月の姫~夢占(ゆめうら)の花嫁~
第26章 第三話【夜に微睡む蓮】
「観相師~王を導く娘」シリーズ第三弾。
イケメン国王燕海君から何度もプロポーズされている明華。
しかし、後宮には15人の側室たちがおり、彼女たちの存在が明華は気になってしまう。
また、いまだ観相師として一人前とは言えず、天職とも思う道を極めたいという想いも強く、人として未熟な我が身が中殿という国母の重責を担うことはできないとも考えている。
恋人ヨン(燕海君)は、明華がその気になるまで待つと言ってくれるが、明華は彼との結婚に踏み切れないでいた。
そんなある日、ヨンの側室の一人「寵姫」であるキム淑儀が懐妊したとの噂が下町にまで流れてきた。
ーお妃様たちとは関係を持たないと約束したのに、彼は私を裏切ったの?
明華は絶望とショックに打ちひしがれるがー。
************************
(本文から抜粋)
「ヨンイ」
ヨンは改めて妃の名を呼んだ。
「言いたくなければ言わなくても良い。さりながら、薬だけは飲まなければならない」
ヨンは再度、器を手に取る。匙で掬った薬湯を妃の口許に運んだ。
「飲みなさい」
観念したかのように、キム淑儀が口を開ける。
「良い子だ」
ヨンは幼子をあやすように言い、また器から薬湯を掬った。今度も大人しく薬湯を飲み、結局、最後まで彼女は薬湯を飲み終えた。
「口直しだ」
添えられている飴玉を口に入れてやる。色とりどりの飴菓子は見た目も美しい。
キム淑儀が堪らず嗚咽を洩らした。
「何故、殿下はそのようにお優しいのですか?
いっそのこと、私を罵って下されば良いのに」
ヨンがひそやかに笑った。
「それは私がそなたに死んで欲しくないからだ」
彼は上掛けからはみ出ている妃の腕を取った。見る影もなく痩せた細い腕だ。
「私はそなたを好きだ。多分、そなたも同じような意味で、私を好きでいてくれると思っている。なれど、残念なことに、私たちは夫婦として連れ添いながら、本当の意味で互いを好きにはなれなかった。それぞれ求める相手は別にいた」
彼に明華がいるように、キム淑儀にも楊内官がいた。そして、それがすべての不幸の因だった。
イケメン国王燕海君から何度もプロポーズされている明華。
しかし、後宮には15人の側室たちがおり、彼女たちの存在が明華は気になってしまう。
また、いまだ観相師として一人前とは言えず、天職とも思う道を極めたいという想いも強く、人として未熟な我が身が中殿という国母の重責を担うことはできないとも考えている。
恋人ヨン(燕海君)は、明華がその気になるまで待つと言ってくれるが、明華は彼との結婚に踏み切れないでいた。
そんなある日、ヨンの側室の一人「寵姫」であるキム淑儀が懐妊したとの噂が下町にまで流れてきた。
ーお妃様たちとは関係を持たないと約束したのに、彼は私を裏切ったの?
明華は絶望とショックに打ちひしがれるがー。
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(本文から抜粋)
「ヨンイ」
ヨンは改めて妃の名を呼んだ。
「言いたくなければ言わなくても良い。さりながら、薬だけは飲まなければならない」
ヨンは再度、器を手に取る。匙で掬った薬湯を妃の口許に運んだ。
「飲みなさい」
観念したかのように、キム淑儀が口を開ける。
「良い子だ」
ヨンは幼子をあやすように言い、また器から薬湯を掬った。今度も大人しく薬湯を飲み、結局、最後まで彼女は薬湯を飲み終えた。
「口直しだ」
添えられている飴玉を口に入れてやる。色とりどりの飴菓子は見た目も美しい。
キム淑儀が堪らず嗚咽を洩らした。
「何故、殿下はそのようにお優しいのですか?
いっそのこと、私を罵って下されば良いのに」
ヨンがひそやかに笑った。
「それは私がそなたに死んで欲しくないからだ」
彼は上掛けからはみ出ている妃の腕を取った。見る影もなく痩せた細い腕だ。
「私はそなたを好きだ。多分、そなたも同じような意味で、私を好きでいてくれると思っている。なれど、残念なことに、私たちは夫婦として連れ添いながら、本当の意味で互いを好きにはなれなかった。それぞれ求める相手は別にいた」
彼に明華がいるように、キム淑儀にも楊内官がいた。そして、それがすべての不幸の因だった。