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† 姫と剣 †
第6章 アノア王国
広がる砂漠。
感じたことのない空気の匂い。
図鑑でしか見たことのなかった鳥を目で追いかける。
体で感じられるものすべてが新鮮でルシアの胸を高鳴らせる。
「そんなに窓から身を乗り出していると馬車から落ちてしまいますよ」
「えっ……?」
無邪気な様子のルシアにふふと笑うロイに、ルシアは恥ずかしさから顔を赤らめて、馬車の中に身を引っ込める。
そして、すかさずロイはルシアのそばによってその腰を強引に掴んだ。
「本当に、あなたは愛らしいお方ですね…」
「お、王子っ……」
「こちらをご覧ください」
ルシアが見ていた窓とは反対の窓にロイが目を向けるとルシアは言われるがままその先を見つめた。
遠く、緑が生い茂っているのが分かる。
それは砂漠の中のオアシスさながら……
「あれが……」
「えぇ、我が国アノアです」
再び、身を乗り出そうとするルシアの姿を見て、ロイは仕方なく腕を離す。
金色の髪がキラキラと輝くとの同様に、その深緑の瞳も輝く。
緩く笑ったロイも普段の帰国にはない興奮を感じながら、まだ遠い祖国を眺めると、不意に視界に騎馬するリューイが入って、げんなりとした表情を見せた。
「姫、まだ到着まで時間があります」
「リューイ……」
「少し眠られてはいかがですか?」
「大丈夫よ。せっかくだからちゃんとこの風景を目に焼き付けておきたいの」
微笑み返したルシアは、広大な土地をバックに騎馬するリューイの姿をじっくりと眺めていた。