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第5章 あなたは誰

“コンコンコン”


「どうぞ、入って。」
龍崎部長の落ち着いた低い声が聞こえた。

「失礼致します…鈴木です。」
ドアを開けると、龍崎部長はデスクに座り仕事中だった。
「ごめんね…もう少しで終わるから座って待ってて。」


私は部長室のソファーに座ったが、緊張で手が震えそうだ…


カタカタ…部長のノートPCを打ち込む音だけが部屋に響く…
静かな室内に、私の心臓の音が聞こえそうだ…


カタン…パチン、ノートPCを閉じる音がした。


「待たせたね…コーヒーでも飲む？」
龍崎部長は立ち上がり、コーヒーサーバーに手をかけた…

「ブラックで大丈夫かな？」
「…ありがとうございます…」
「どうぞ…冷めないうちに…」

龍崎部長はコーヒーを置きながら私の前に座り、軽く足を組んだ…

何気ない仕草も悔しいほど絵になる…ドキッと心臓が鳴る…


「あの…お伺いしたいのは…その…き…京子…いや、西条さんのことで…」
「…うん。西条さんがどうかしたの…？」
「だから…その…龍崎部長とお食事してから…なんか…元気ないし…」
「そう…。食事してセックスしたこと？」



その言葉に顔が爆発しそうなほど赤くなったのがわかる…心臓が飛び出しそう…



「な…な…なんでそんなに平然と…やめてください、そんな言い方…」
「だって、聞いたのは鈴木さんでしょ…そんなに真っ赤になって可愛いね…」
「どうして…好きな方が他にいらっしゃるのに、京子にそんなことできるんですか…？」
「う…ん、僕が誘った訳じゃないよ…彼女がそうしたいって言うから…」
「でも…部長は彼女の気持ち知ってて…そんなこと…」



龍崎部長は静かに微笑んだ…
「僕が彼女にしたことがそんなに許せないなら…君にも同じことしてみようか…」