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不倫研究サークル
第8章 ふりだしに戻って
小梢が土門華子に託されたのは、僕へ彼女の想いを伝えることだ。
だとすると、小梢は役割を果たしたことになる。

問題は、小梢が土門華子の恋を奪ってしまうと思っていること、そのことを小梢は気にしている。

短い期間だったが、小梢の事がようやく分かってきた。
彼女は一本芯が通っていて、頑固な性格をしている。

おそらく、僕と本当の恋人にはなれないと思っているだろう。そして、その考えを覆すだけの英知を僕は持ち合わせていない。

だったら、僕にできることは、一つしかない。


  僕が小梢をあきらめれば良いだけだ。


小梢は僕と恋人になれないだけなのだから、違う人と恋をして、土門華子と関係ないところで普通に幸せに生きていけば良い。

もう、小梢は土門華子の願いをかなえてやったのだから、これ以上、彼女の死に責任を負う必要はない。



僕にできる事をする。それで、小梢は自分の人生を取り戻せる。


そもそも、小梢のような超絶美少女が、僕と恋人になるなんて出来過ぎた話だ。

(僕も振り出しに戻って、東京に出てきた目的を思い出すんだ)

小梢ほどでなくても、可愛い女の子と普通に恋をして、イチャイチャして、普通の若者の生活をして、大学の四年間を楽しく過ごす。


(うん、そうだ。きっぱりと小梢の事は忘れよう)

彼女は元々いなかった、ということにすれば良い。


どうと言う事はない。


どうと言う事はない。



でも……、

(小梢の匂いがする……)

ベッドの残り香に気持が揺らぎ、涙が出そうになるが、自分に言い聞かせる。


「ウジウジと考えるのは……、小梢の事を考えるのは、今日までだ!」

ベッドの上で足をジタバタさせた。




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