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BeLoved.
第28章 【カレハミエナイヒト。】

「俺ら外出た意味ねーじゃん」

指に挟んだ煙草を高く掲げながら、流星さまが呆れたように言う。片や麗さまは火を着けたばかりにも関わらず瞬時に揉み消してくれた。

「だって…怖くて…」
「幽霊だからってやたら怖がる必要ねーよ?」
「…でも…」
「それに言ったじゃん。何処にでも居るって」

いちいち気にしてたらもたねーよ、と流星さまは畳み掛けてくるけど、決して楽しみを中断させられて不機嫌になっているわけじゃない。これは彼なりのフォローだ。
込み上げるのは罪悪感。だけど、見てはならないものを見てしまった恐怖と不安は拭えない。手すりを両手で握りしめ縮こまった時だった。

「未結ちゃん、一番怖いのは生きた人間だよ」

ふいに差し込まれた麗さまの静かな声。

「自分の欲の為なら何だってするんだから」
「……」

見上げたとき、彼はこちらを向いてはいなかった。…いつもわたしを見てくれるその切れ長の目はわたしではなく、眼前に広がる夜景でもなく、どこか遠くを見ている。
…彼のこの顔は知ってる。深入りされるのを望まない…本心が見えない、わたしとの間にすら壁を作っているときのものだ。
…ほんの一瞬だけ、胸が締め付けられる思いがした。

「それなー麗。ホント思うわ。未結にコレ言ったっけ?俺がトップ就いたばっかの頃、現場で他殺体掘り出しちゃった って」
「えっ」
「しかも4人分」

衝撃発言に硬直するわたしとは真逆に、麗さまからは「ボンクラ」といつも通りの突っ込みが入る。

「それはお前の会社が迷惑被ったって話だろ」
「あん時は人間怖ぇって改めて思い知ったわ」

流星さまが怖いのは『段取り命納期命の建設業界において、生きた人間の行為によって両方狂わされた』ことだ。
…やはり彼の感覚は少しずれている気がする。彼もまた読めず見えずな人だ。麗さまも呆れたようにため息をついていた。

「ま、この仕事してりゃよくあんだけどさ」
「だろうね」
「……」


…なんだろう。急に淋しくなってきた。

それは意図せずとも、改めて彼らとわたしの感覚の違いに触れたからか。生きてきた道、見てきたもの、その違いに触れたからか。わからない。わからないけど。
俯き、手すりを握る両手に視線を落としていた時だった。

「…!」

突然両頬に広がったぬくもりとくすぐったさ。
頬に口付けられたのだ。彼らから左右同時に。
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