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BeLoved.
第32章 【白い檻】

「えっと…その…買いすぎちゃって…」
「エレベーター使えないって言ったよね?」
未結ちゃん。わたしを叱るときのお決まりの呼び方。話を聞いていなかったことを咎められてしまった。
…でも、今日のわたしはどうしても素直に謝る気にはなれなかった。エレベーターのことを失念してしまったのは、彼のせいでもあるのだから。
「何でそんなむくれてるの」
「……」
わたしの気持ちなんか知りもしない彼は更に畳み掛けてくる。返事をせずにいたら、小さくため息をつかれてしまった。
「それ、駄目になっちゃったの?」
「え?」
「アイス」
彼が指し示したのは、わたしの手にある変形しかけたカップ。
…まさかアイスを溶かしてしまったから、機嫌を悪くしていると思われた??いくらわたしが食いしん坊だからって、さすがにそんなことで拗ねたりしない…多分。…ううん、しない!
「違いますっ、わたし…っ」
「なら今食べてもいいよ?」
「……」
彼いわく今6、7階は未入居。誰も来ないから、と。…ああ、流星さまを変なところで抜けている人と言っていた彼だけど、どうやらあなたもその気があります。だから二人は仲良しだし…
昨夜みたいなこともできちゃうんだろうな…。怖くて言えないけど。
「…いただきます」
四の五の反論するのはやめた。やや柔らかくなった蓋を外し、買った店で付けてもらった木のスプーンで、少しずつすくいながら口に運んでいった。
「…麗さま、お出掛けされるんじゃ?」
シェイクのようになってしまったアイスを食べ進めながら、ふとわいた疑問をぶつける。
『昼頃帰る』昨夜そう言った彼は、わたしが思っていた時刻よりも早く帰宅されたようだ。それこそ、わたしが留守にしているうちに。
階段を降りてきたのだから、また出て行くんだなぁと思ったんだけど…彼は隣に座ったままだ。
「ん?…んー…うん」
返ってきたのも生返事。それに…
「…どうかされましたか?」
頬杖を付きながらずっとわたしを見ている。
「いや、食ってる顔可愛いなと思って」
「な、何言ってるんですか……っ!」
「未結のこと大好きだもん」
「なっ…」
いつでも物怖じせずに気持ちを伝えてくれる彼。こんな時でもそれは変わらない。…嬉しいけれど同時に怒りも沸いた。
「…ら、なんで昨夜あんなこと…!わたし、ずっと…!」
「…ずっと?」

