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第41章 【密室の獣】

「なー?未結ってダメ人間製造機だろ?麗」

その夜。久々に3人揃ったリビングダイニング。
視線の先には、テーブルを挟んで腰掛け夕食をとる彼らの姿。

「ていうか、居るだけで本能引きずり出されてこわい」
「しかも無自覚だぜー?あいつマジでタチ悪りーよな」
「…そういうお話はわたしがいない所でして下さい!」

すぐそばにわたしが居ることなどお構い無しに、好き放題言い合う彼ら。すかさず抗議の声をあげたけど…わたし自身はソファにぐったりと身を横たわらせていた。

この短い間に各々から愛されて。精も根も尽き果てた。足腰が立たない…

病み上がりとは思えない量を黙々と食べ続ける彼と、予定がキャンセルになり早々に帰宅出来た彼(今朝の着信はそれを知らせるものだったらしい)が居る。
いまひとつ釈然としない気持ちを抱えつつも、久方振りの『日常』に安堵しているのも事実だった。


「つか、あんな所よく行けたな」

ふいに流星さまが呟く。『あんな所』とは、麗さまとわたしが過ごしていたあの場所のことだ。もちろん理由を聞いた。

「"溜まりやすい"のよ。場所が場所だろ?レ○プやら殺しやらの犯罪に使われるし、男女の愛憎なんか日常茶飯事だし。俺ぶっちゃけ行きたくねーもん。実際さっきまで未結に一体憑いてたからね」

…後悔した。

「あとAVも無理」
「そ、それはどうして…」
「世話んなるほど不自由してねーから。…てか、普通に気持ち悪くない?肉と肉が重なり合ってんの」

見れなくはないけど。と言いつつ眉間に皺が寄ってる。ああ、本当に嫌なのね…彼はざっくばらんに見えて意外と潔癖だ。

「ま人生何事も経験だから。俺が行けねーとこは麗に連れてってもらえよ。オイ麗お前、どーせ今回も"焼け太り"したろ?」
「リーマン様と違ってこちとら体一つでやってるからね」

当然。といつの間にか台所にいた麗さまが戻りながら言う。その手には…何杯目かのカレーが。食べてくれるのは嬉しいけど、本当に大丈夫かし…

「だから保険屋は手懐けとくの」

咄嗟に触れたのは首筋に残された噛み跡。

そう、彼は何処までも『喰らう』側なのだ。
そしてそれは流星さまも…わたしも同じだ。

もう目は逸らせない『本当のわたし』。

彼らを飼い慣らせるのはわたしだけ
彼らはわたしの男。わたしのものと

わたしに伏在する『獣』は…戦慄くのだった。
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