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BeLoved.
第44章 【彼の根底にあるもの。2】

「ッ!」

はた、と目を開けば。あたりは薄暗くて。
視線の先には見慣れた天井。わたしは横たわっているようだ。…自分のベッドの中で。

「……」

水を打ったような静けさ。物音ひとつしない。
…あれからいったいどうなったんだろう…

「、あれっ…」

服を着てる。身体も動かせる。寝起きのせいか気だるさはままあるものの、上体を起こすことができた。さっきは駄目だったのに。

…夢…だったのかな。どこから?どこまで?

それにしてはなんというか…やけに現実味を帯びていたというか…生々しかったというか。だけど身じろいでも、多少の違和感はあれど…その…『溢れて』こない。

…とりあえずリビングに行ってみよう。そしたらハッキリする。ベッドを降りて歩き出した…ら。ノブに触るより早く、ゆっくりとドアが開いた。

「…起きたんだね、未結」
「あ…」

そこにいたのは麗さまだった。廊下も部屋同様薄暗く、顔はよく見えなかったけど…声も雰囲気も平静だった。
目を凝らしてみると…彼は上着を羽織っている。わかった、これからお出かけされるんだ。

「俺今帰ったところだよ」
「?だってさっきまで…」

頭がついてこない。

「…なに?どうしたの?」

寝ぼけている?具合が悪い?彼の声に、わたしの身を案じる色が滲み始めた。

「ち、違います、…あの…」
「…だから、なに?」
「……」

…やっぱり全ては夢…だったのだろうか。

無言になり、俯いて考え込んでしまった頭に、掌が乗せられた。わたしが大好きな、大きくて温かい手。いつもと何も変わらないその感触に、ざわついていた心中がすとんと落ち着いた。…うん、きっと長い夢だったのね。

「…ごめんなさい、なんでもないですっ」
「大丈夫?」

でなければこの人があんな…今朝みたいな状態になるわけないものね。

「あ、そうだ。はい、これ」

そう言って手渡されたのは、コンビニのレジ袋。覗き込んで見ると、中身は透明なプラスチックケースに入れられた二切れ入りの…

「ケーキ…。……!」

その瞬間、襲ってきたのは強烈な既視感。左手薬指に走った痛み。見上げた先…暗さに慣れた視界の先には、目の周りに痣を作り、頬を腫らした…麗。

「みゆみゆと食べたくて」
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