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第44章 【彼の根底にあるもの。2】

「ったく未結なぁ!俺の"はじめて"は奪ってくは、麗の心のドアはブチ破るは、マジでおまえどんだけ俺らんこと弄べば気ぃ済むんだよ」

──さて、もうじきと日付が変わる時刻。
普段なら余程のことが無ければ、この時間帯はおうちにいる。…が、今日はその『余程のこと』があった日だ。
今、わたし…と彼らの姿は、いつぞやに訪れた焼肉屋さんにある(お値段だけでもなのに、終日営業と知り更に驚いた)。

『血を流した後は肉』そのお約束(?)どおり、彼らは揃って満身創痍だ。
テーブルを挟み、わたしの向かいに腰かけているのは流星さま。お肉を網に並べながら忌々しげに喚いた彼の顔面は、頬が腫れ唇が裂け。鼻に至っては骨折し、小さなギプスで覆われている。折ったのは…

「おい流星"はじめて"ってなんだよ」

無論この方。麗さまだ。わたしの左隣に腰かけている彼も、平静な声とは裏腹に…きれいなお顔がえらいことになってしまっている。
痣や腫れは言わずもがな、彼の場合は前歯が2本折られてしまった(本人曰く元から差し歯だったそうだけど)。折ったのは…

「うっせーなそこ食い付いてくんなよヘタ麗!」

…この方。
そんな彼らに戦くわたしも…出血している。…月のものだけど。
目覚めた時に感じた下腹部の違和感はこのせいだったのだ。そう言えばそろそろだったっけ…。憂鬱な反面、何処か安堵もしていた。そして「鉄分採れ」とレバーばかりが焼かれていく…。

「で、麗お前いつまでそーしてんの」

煙の向こうから流星さまが睨みつけた先には、しかと繋がれたわたしと麗さまの手。いつかみたくテーブルの下で隠れてでは無く、堂々と机上で。
席についてからずっとこの状態。わたしは良い(いや、視線は物凄く痛い…)んだけど…彼の利き手は塞がれているし、食べ辛いだろうに。そう促しても絶対に離そうとしてくれないのだ。

「未結が食べさせて」

あげく、このおねだり。傷だらけでも秀麗な笑顔と強引さは変わらないのだから、もう痙笑するしかなくて。

「じゃ俺が食わしてやるよ。はーい麗くん、あーん」
「鼻だけじゃなくて指もへし折ってやろうか、流星」
「麗さま落ち着いて下さい…あと流星さまそれ生肉です…」

そして、このやり取りにも。
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