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BeLoved.
第17章 【彼と彼の兄と姉】

一般家庭ではないのだから『事情』がある。
くれぐれも要らない詮索はするんじゃない。

生前、おばあちゃんからは釘を刺されていたけど。


「流星のママが本妻で、僕の母は愛人さん。だから次男だけど有栖川家も会社も流星のなの」

…聞くまでもなく、ご本人が教えてくれた。
しかもまだ、入りたてだった頃のわたしに。

複雑な生い立ちのはず。でも椎名さまはいつでも笑顔。暗い表情なんて見たことがない。

そんな彼らの仲はというと。

「どーやって入ったんだよ!」
「やだー、流ちゃんこわーい」

…すこぶる悪い。と言うより流星さまの方が一方的に嫌っている感じだ。現に今だって声を張り上げているのは彼だけで、椎名さまは笑顔。

「あそーだ流星、えっちすんのもいいけど終わったら換気しようねー。残り香すごかったよ」
「うるせーな!さっさと帰れ!!」

椎名さまの助言?に卒倒しかけたわたしの耳に、呼び鈴の音が届いた。思い当たる来客は一人しかいない。気を取り直し玄関に向かった。

──────────

「未結ちゃーん♪お久しぶり!」
「羅々さま…っ!」

予想通り。そこにいたのは、スラリとした長身と抜群のスタイル。丁寧に巻かれた艶やかな長い髪。まるで女優さんみたいに華やかな雰囲気を持つ、正真正銘の美人さん、羅々さまだった。
玄関がパッと明るくなり、まるで大きな花が咲いたみたい。さすがは麗さまのお姉さまといったところ…

「ご無沙汰してま…」
「…大変だったわね」

言葉を遮られ、いきなり胸に抱き締められてしまった。ふわ…と甘い柑橘系の香りに包まれる。柔らかくて、暖かくて、そして…苦しい。

「…姉ちゃんやめて。未結が潰れる」

そう。小柄なわたしは羅々さまのちょうど…お胸の位置で顔が埋まる。苦しいのもあるが、同性とはいえ気まずい…。
だから羅々さまの後に続いて来た麗さまが間に入り引き離してくれたのは、正直助かった。

「大袈裟ねー。あ流星くん。お久し振り」
「羅々姉お疲れ。…オイ麗ちょっと」

いつの間にか流星さまも玄関に来られていた。…あ、彼は「ららねえ」って呼んでるんだ。かわいい。

流星さまは憮然とした表情でわたし達の横を通り過ぎると、麗さまに何やら耳打ちをした。

途端に麗さまの表情も険しくなる。そして何故か彼らは羅々さまにわたしを託すと、連れ立って出ていってしまったのだった。
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