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第18章 【番外編/口は災いの元】

「お誕生日おめでとうございます、流星さま」

7月21日は、流星さまのお誕生日。

ご本人の希望もあって、何処かへ出掛けるとかパーティーを開くとか、特別なことはしない。

でも嬉しいことに当日は日曜日。
流星さまも休みでおうちにいる。

迎えた当日の朝。寝室からダイニングへと姿を現した彼に、早速お祝いの言葉と品を贈った。

「これ、使って下さいっ」
「ありがとなー、未結。大事にするわ」

わたしが用意したプレゼントはネクタイ。
シンプルなダークブルーが、流星さまのイメージと重なって即決だったのだ。

「よかったな。7月21日なんて、テメーの人生を象徴してるよな」
「口減らねーな。素直に祝えよ麗ー」

一足早く朝食を終え、食後のお茶を飲む麗さまはつまらなそう。…ん?

「どうしてですか?」

考えるより先に、抱いた疑問は口から飛び出ていた。彼らは「え?」とわたしの方を向く。

「どうして7月21日が、流星さまを象徴してるんですか?」

静寂に包まれる室内。ハッとしたように流星さまが声をあげた。何故かすごく楽しそう。

「そーだよなあ!オイ麗なんでだ。説明しろ」
「…テメーはわかってん」
「わかんねーなぁ。ほら俺、ボンクラだから」

にやにやと笑みを浮かべたくらいにして。
麗さまはそんな流星さまを忌々しげに一瞥すると、腰掛けている彼らの脇に立つわたしを見上げた。その視線は気のせいか縋りつく様な…

「…未結、本当にわからない?」
「はい」
「……」
「麗さま?」

項垂れてしまった麗さまだったが、次の瞬間には意を決したように顔を上げ流星さまを真っ直ぐ見据えた。
そして次にその口から発せられたのは…

「流星ごめん。俺が悪かった。おめでとう」

謝罪と祝福。わたしが面喰らってしまった。
なに?なに?な何で麗さまは謝ってるの?

「うーわっ、麗謝らせちゃったよ!未結おまえ最高」
「???…っあ、…」

歓喜した流星さまは、その勢いでわたしを抱き寄せると膝に乗せ、頭をわしわしと撫でた。更に包み込むように抱き締め頬を寄せてくる。

「麗!今日お前の日だけど譲れ!したら許す」
「調子こくなボンクラ!」
「???」

また新たな言い争いが始まってしまい、結局
わたしの疑問は未解決で終了したのだった。
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