この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
メンズミーティング
第7章 衛生兵 ナノ

「お前は要らない」
医を生業とする家系に生を受けた自分が
まず教え込まれたことは。自分が決して
望まれて生まれたのではないという事実
悲しい、淋しい、それはどんな感情か?
気付いた頃にはすっかり麻痺していて
母を亡くした日すら涙も出なかった。
「お前は要らない」
わかっています。お父さん。
この家には…否、貴方には
兄さんがいれば良いのだと。
不要な存在でも『総監の息子』に
違いはない。医の道から外れたり
落ちこぼれることは許されない。
自分の中の真っ白でなにもない世界。
来る日も来る日も医療の知識だけが
容赦なく詰め込まれ積み上がっていく。
本当に大切な事も必要な事も何ひとつ
与えられても教えられてもいないのに。
ただただ繰り返される無機質な日々
否定されるか無視をされるかの日々
そんなときに現れたのは
──姉さん、貴女でした。
あの日父が屋敷に連れてきた
年端もいかぬ少女だった貴女
腹違いの姉だと告げられたときも
なにも感じることはなかったのに
『よろしくね』
見せてくれた笑顔はまぶしかった。
差し出された手はあたたかかった。
その笑顔を見た瞬間。手に触れた瞬間。
自分のなかの『なにか』が溶かされた。
そんな感覚を覚えたのは忘れられない。
貴女は他にもたくさん教えてくれました。
触れられる安心感
認められる充実感
求められる幸福感
そして───『女』というものを。

