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Secret space
第1章 1
その瞬間

息が

止まるかと 思った。

眩し過ぎる初夏の光に眼を刺され、このむせ返る暑さの真昼間に 
俺は 幻を見たのかと。


すぐに車を車道の端に止めさせ、開け放したドアから
黒々と熱されたアスファルトの上に降り立った。

その姿を夢中で眼で追う。

   間違い 無い。

今 眼に映るあの姿は 確かに存在する実体。
生きている・・・動いて その足で歩いて 鼓動している。

こんなことが、あるのだろうか?
本当に、白昼夢でも 見ているのでは無いだろうか。


声  声が聞こえる。
隣の少女と 何か話している。
人ごみの中、全神経を聴覚へと集中させる。

近づく。
もうすぐ、すれ違う。

ああ、この声
甘く 細く 透る声。 まさか再び聞けるとは。

これは偶然か それとも必然か。

その手を掴んで、その身体を 抱き留めたい衝動に必死で耐える。
噛み締めた 奥歯が軋しんで小さく音を立てる。

すれ違ったその後姿を、ただ無言で見送った。


これは 夢では ない。
すぐにでも、あの身元を調べさせよう。そのぐらいなら造作も無い。

そして 何としてでも 手に 入れてやる。

その為ならば、俺の全てを費やそう。

何を犠牲にしてもかまわない。

あれは誰にも渡さない。

どんな手段も選ばない。

刃向かわれようが関係ない。

手に入れる。絶対に。

張詰めたこの想いは狂気に似ている。

見つけた   次に 逢うときは

お前は 俺のもの。
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