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Secret space
第11章 11
(今さっき、私が あんな目にあったばかりだというのに
 それなのに抱こうっていうの!?
 しかも違う女(ひと)の代わりに!?!)


目から剥がれ落ちる涙の雫に構わずに
男の顔を見上げて睨めつける。

表情を取り除かれた男の黒い双眸は
暗い洞窟を縫って地底まで 深く穿った暗い穴を覗き込むようだ。


(いや・・・ 怖い・・・ )


湧き上がった怒りよりも恐怖が増して、紗織は男を凝視できずに目を反らす。

その一瞬で、身体が床に押し倒される。


「やだあぁ!!!」


男の腕の中から抜け出そうと、必死の抵抗を試みたが、
紗織より遥かに力の勝っていた精司でさえ
いとも簡単にねじ伏せたこの男に、女の自分が敵うはずもなかった。

『お前になら出来る』

冷たく響いた男の言葉が、ずるずると痕を残して再び脳裏を駆け巡る。


(代わりなんて嫌っ! 絶対に嫌!!
 私なんて、何処にも居ないじゃない!!)


嗚咽とも悲鳴とも区別のつかない声を無闇矢鱈に叫びたくなる。


「アッ・・・ぐく・・」


楕円に開こうとした紗織の唇に男の唇が強引に重なり悲鳴を塞ぐ。
目の回るような憎悪を覚えて
紗織は自分の唇に触れた物体に噛み付いた。
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