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Q 強制受精で生まれる私
第6章 2.5度目
「…失礼ですが、あなた、夫か彼氏はいますか?」

「えっ。夫…彼氏、ですか?」

「そうです。不妊治療で来ているって言ってたんでしょ、そのお医者さん。それなら夫か、彼氏なり何らかの付き合っている男がいるのが当然でしょう? 夜のパートナーがいないとそんな治療受ける訳ないですし。」

 そうだ。確かにこの人の言う通りだ。どうして今までその考えに至らなかったのだろう…自分のことばかり気にしていて、先生以外の他人に考えを巡らせたことが無かった。

 だけど、いざ気付かされた所で、やはり思い当たる節は何も無い。

「そんなこと言われたって…何も思い出せないって言ってるじゃないですか…」

 はぁーと大きく溜め息をつきながら、警察の人はペンを片付ける。私の目の前で堂々とやるその行為は、もうこの件には関わらないという向こうの意思表示そのものだった。

「あのねぇ。こっちも慈善事業で付き合ってあげている訳じゃないんだよ!! 自分から喚いてきたくせに、何も覚えていない。住居も年齢も不詳。自身を証明する物も無い! 男の存在も分からない!! そんなので動ける訳ないでしょ!?」

「何よ…何で私がそんなに言われなくちゃならないの!? 警察は悪い人を捕まえるのが仕事でしょ!? それに彼氏とか夫とか、何も関係ないじゃない!!」

「大いにありますよ。あなたが彼氏さんに隠れて別の男、そのお医者さんとヤっているかもしれないじゃないですか。それで旦那にバレそうだから訴えようとしてるんでしょ? 襲われたのが嘘だった場合、あなたは虚偽告訴罪で逮捕しなくてはならないんですよ?」

 「ま、証拠があるなら話は別だけど。」と警察の風上にも置けない男は吐き捨てる。私は頭に登った血が爆発し、ありったけの力を込めて机を叩く。バンッという鈍い騒音と共に溜まりに溜まった怒りが噴火する。
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