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Q 強制受精で生まれる私
第6章 2.5度目
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 夕焼けを背にオレンジ色に染まるあぜ道をひたすら歩くこと45分程は経っただろうか。足の感覚が痛覚のみになった頃に、遠くの方で先生の病院がようやく見えてくる。

 片道30分と今朝先生から聞かされていたのに、長時間歩いたことによる疲れからか、思ったよりも時間がかかってしまった。蜃気楼でないことを祈りつつ、私は重い足取りを奮い立たせてゴールへと歩を進める。

 やっとの思いで病院に辿り着いた私は、よろよろと玄関に近付く。さすがに一日中歩き続けて疲れてしまった。ここまで来れば急ぐ必要はないし、しばらくドアにもたれ掛かって休もうと折れそうな膝を支えるために、取手に手をかける。

 その時。
 ドアが軽く開いて、ガチャンという音すら立てず静かに閉まった。

「えっ…なん、で…」

 鍵が、かかってない…?
 嘘だと思い、再度取手を掴んで後ろに引くと、ドアは何も引っ掛かることなく開いていく。

 私は急いで立ち上がり、建物の後ろに向かう。

 窓ガラスから、先生の診察室から、白い光が漏れている。
 何も映っていないのに、人の気配がするのを凍りつく背筋で感じ取ってしまう。

 まさか泥棒…それとも…

 私は何かに取り付かれてしまったかの様にフラフラと玄関に戻り、ドアを開けて中に入ってしまう。どう考えても引き返した方が賢明なのに、足が止まらない。操り人形の様にそのまま室内を進み、診察室の前まで来てしまう。

 中から何か二人分の話し声が聞こえる。声の高さから片方は男、もう片方は女だろうと推測する。
 私は冷や汗でベタつき、震えが止まらないその手で取手を掴み…そのまま力一杯開けてしまった。

 
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