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Q 強制受精で生まれる私
第9章 3.5度目
「へぇ、意外ね。今まで私にやってきたことを少しは悪いことだとは思っているんですね。それすら分からない猿だと思ってました。」

「私は医者としての職務をまっとうしているだけなのですが、浜園さんはそうご認識していただけないみたいなので一応世間の言い分を確認しています。私は法律の専門家ではないので、間違った解釈をする可能性はなきにしもあらずですから。」

「あぁそうですか!! なら昨日のビデオカメラ返しなさいよ。私がしかるべき所に持っていってあげる。世間はそれを見てあなたのことを何て言うでしょうね!?」

 襲いかかりたい気持ちを必死に抑えようと後ろ手に組んでいる手首を掴む握力を強める。世間が注目していないから正しいとでも言いたいわけ? 冗談じゃない。程度に限らず悪いことは悪い。そんな人間として当たり前の常識すらこのクズには欠落しているのか。

「さて。開院までまだ時間があります。お腹すいたでしょう? つまらない物しかありませんが、おひとついかがですか…あぁその前に今日の検温をしないと、ですね。」
 
 苛立ちが頂点に達している私を歯牙にもかけず、先生は体温計をこちらに差し出す。反省という言葉がこの男にはないのか、あの媚薬入りだった時の物と全く同じ物を、全く同じやり方で私に向けてくる。カッとなった私は先生の手をおもいっきり平手打ちする。体温計が壁に衝突し、割れた様な清々しい音を響かせる。

「馬鹿にするのもいい加減にして!! 私のこと学習能力のないペットだとでも思っているわけ!? もうあなたの手にはかからない。堕とそうたってそうはいかないわ!!」

 先生は怪訝そうな顔して痛むであろう掌と私の顔を交互に見る。二、三度程それを繰り返すとじっとこちらを見つめ返して不意に頬を緩める。その態度に頭がきた私は先生の頬目掛けて力一杯振りかぶるも、当たる寸前で先生に腕を掴まれてしまう。悪寒が右腕から全身に駆け巡り引き剥がそうとするも、男の人の力は強いのかいくら抵抗しても手が離れない。そのやり取りがしばらく続き、先生の手が離れたのは私が疲れてきて徐々に静まってきてからだった。
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