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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第4章 柔らかな寝台と触れた熱
「眠れないの?」

 昼間に聞いても十分婀娜な声色は、夜闇の中では恐ろしいほどの艶やかさを持っていた。背骨がぞくぞく震える。陽色が細いからだを震わせたのを、夜泣きか何かと受け取ったのか、彼女は本を閉じて陽色を手招いた。

「上がっていいよ」
「う、ぅ」

 慎重に寝台に上り、そうっと彼女の隣に座る。彼女は陽色の額に手を当て、ひとみを合わせた。

「体温は問題なさそうだね。頭が痛い? それとも吐き気がする? 怖いことがあったのだからね、体調が悪くなるのも仕方の無いことだよ」
「あ、あ、あのね、」

 薔薇の花を閉じ込めたような、あまい香りがする。くらくら、くらくら、酷い眩暈。今にも倒れてしまいそうだ。陽色は顔を伏せる。あのね、えっとね。

「おれい、しよ、て、思って」
「……ええと、体調は大丈夫みたいだね。と、云うと?」
「ちゅって、して、いい?」

 彼女はみるみる内にひとみをまあるくした。露濡れた金色の睫毛も大げさにぱちぱちとする。君、ほんとうに変わっているのだね!

「陽色、君、姿かたちだけでなくて、頭の中まで歪なのかね?」
「ふあ、あんたがそう云うなら、そうなのかも」

 幾度かくちを開け閉めした後、彼女はふ、とため息をついて寝台に背を預けた。

「いいよ」
「え?」

 おいで。私の気が変わらぬ間に。

 金の薔薇は花弁を広げ、静かにそう云い、陽色を誘う。それから、ほんの少しだけ、顔を顰めた。

「お人形にこんなこと云われるのなんて、もしかしたら一生に一度かもしれないしね」

 西園寺の言葉に、云われたお人形は数度、目蓋をぱちぱち、瞬かせる。それから、顔を真赤にして叫んだ。

「……や、やさしくする!」
「ああ……待て。何をどこまでする気だね!?」

 よいしょと薄い腹の上に乗り上げ、首元に頬を押し当てる。

「なにって、あんたがとめるまで、ぜえんぶ」
「ぜえんぶ、」
「うん。あんたがとめたら、やめるけど」

 雪の如くに真白い肌は柔らかくて、とくとくと脈打っていて、薄温かくて、不思議と安心する。

 今朝で二度目、すぐに三度目。

 このひとは会いにきてくれたし、迎えに来てくれた。ゆき場のなくなった陽色を、引き取ると云って連れてきてくれた。

 ならばかわいい坊やでも、仔猫でも、お人形でも、何にでも、なる。
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