この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第6章 心中サアカスと惑溺のグランギニョル
 ……どうにも、色と柄に見覚えがある。

 よくよく目を凝らし、しまいには手に取って光に翳してみた。

 紅、黒、金、荊。

 そしてその真ん中に、紳士だか淑女だかよくわからぬひとが立っている。

 実物をそのまま封じ込めたかのような、繊細な筆遣いは、確かに昔見た。

 そう、これは、随分色褪せて、古ぼけてしまっているけれど、昔兄に描かせた。

「これ……私だね」
「んえ、」
「こんなものがまだ残っているなんて。店の棚に置くことすらゆるされていないと云うのに。いったい、どこで見つけたの」
「ごしゅじんさま、の、うた?」
「ああ、そうだね。何を歌っているのかわからないのも当然だよ。独逸語だもの」
「どいつご?」
「……そう、どいつご」

 私のお母さまが生まれたお国。私のお母さまが、帰ったお国。
 西園寺は、陽色の幼い口調を、模倣するようにそう云った。それから、天井に備え付けられた洋燈に目を向ける。外は夜闇に閉ざされているが、辻馬車の中は優しい橙色の光で包まれていた。

「そうか、私は、化け物は……神さま、だったのだね、君には」

 まだよく呑みこめない、という顔をした陽色に、小さく笑いかける。

 よかった、よかったじゃあないか、君! レコオドが聞けなくたって、これから私が幾らでも歌ってあげるのだよ!

 その言葉に、陽色は、おおきなひとみを、まるまると見開かせる。視線は一点、西園寺の手元に、正確には壊れたレコオドに注がれていた。自然、西園寺のひとみも、手の中のそれに引き寄せられる。
/101ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ