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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅤ(覚醒)
 中には親友だから、そんなことも頼めるのだと訳知り顔で言う人もいるかもしれない。が、本当の友人であれば、まだ法律で認められてもいないような代理母出産を頼んだりするだろうか。
 少なくとも、有喜菜ならば、顔を見たこともない誰か別の女性に頼むだろうし、また端(はな)から、他人の子宮を借りてまで子を得ようとは思わないに違いない。子どものいない人生は淋しいけれど、従容と受け容れて静かに暮らす道を選ぶだろう。
 紗英子が代理母になって欲しいと言った瞬間から、自分たちを繋いでいた友としての絆は絶たれたに等しい。
 やはり、紗英子は有喜菜をその程度にしか見てはいなかったというのが、証明されたような出来事でもあった。有喜菜が紗英子に出逢ったのはもう二十六年も前のことになる。
 大阪から父の仕事の都合で引っ越してきた先の小学校で同じクラスになったのだ。性格が対照的だったせいか、二人は愕くほどうまくいった。やがて中学に入り、有喜菜は直輝に出逢う。これは誰にも話したことはないけれど、有喜菜は直輝を好きだった。いや、多分、今も彼への気持ちは変わっていないと思う。
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