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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第12章 ♦予知夢~黒い霧~♦
 そして、紗英子は一年前にも、五日前に見たのと殆ど同じ夢を見ている。
 五日前の夢では、女は顔を見せなかったけれど、一年前に見た夢では、後ろを向いていた女が一瞬、紗英子を振り返ったことがある。あのときに見た顔は、確かに今日、病室で見た有喜菜の表情と一致していた。
 淫夢で見た女の顔は有喜菜だった。いつかの淫らな夢が現実になったのだ。紗英子は今、あの夢はやはり予兆であったのだと悟った。
 直輝と有喜菜は、紗英子の知らない間に、既に結ばれていたのだ。何の根拠もないことだが、この時、紗英子は理解した。
 それは妻、いや元妻であった女特有の勘とでも呼べば良いかもしれない。或いは同じ男を軸に有喜菜と二十四年もの間、ずっと牽制し合ってきた女の勘?
 いつ二人が再会し、どんな形で関係を持つようになったのかは知らないけれど、二人が既に引き離せない関係にあることだけは判った。恐らくは紗英子の推察どおり、有喜菜から直輝に真相を告げたに違いない。
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