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月琴~つきのこと~
第4章 第二話 【月琴~つきのこと~】 二 
「ああ」
 嘉平太が妙乃の瞳を見つめ、淡く頷いた。
「本当に、私だけを見て下さいますか」
 応える代わりに、嘉平太の逞しい腕が妙乃を抱き寄せた。ためらいがちに華奢な身体に回された手の温もりが愛おしかった。
 嘉平太の胸に顔を埋め、妙乃は泣いた。
 そう言えば、今宵は十五夜であった。
 信濃屋の庭には秋の盛りの今、姉の愛した萩や吾亦紅(われもこう)が花開き、紫式部が艶(つや)やかな小粒の実をつけている。いずれも姉が丹精した花々であった。
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