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月琴~つきのこと~
第1章 第一話【宵の月】 一
「俺も他人(たにん)様のことを悪く言うのは好きじゃありませんけど、俺がここにいると気づく前、ああ言った卯之助さんの方がお嬢さまの脚を物影から眺めていたように見えました。俺に気づいた卯之助さんが慌てたように大声で俺がお嬢さまの脚を見ていると叫んだんです」
治助の言葉に嘘偽りはないように思える。何より、見るからに純朴そうなこの男には到底すらすらと嘘をつけることはできそうにもない。恐らく、卯之助自身もまた小文が脚を洗うところを盗み見していたに相違ない。それを治助に目撃されたと思い、咄嗟に治助に己れの罪をなすりつけようとしたのだろう。
治助の言葉に嘘偽りはないように思える。何より、見るからに純朴そうなこの男には到底すらすらと嘘をつけることはできそうにもない。恐らく、卯之助自身もまた小文が脚を洗うところを盗み見していたに相違ない。それを治助に目撃されたと思い、咄嗟に治助に己れの罪をなすりつけようとしたのだろう。