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月琴~つきのこと~
第1章 第一話【宵の月】 一
「本当のことを教えて。あなたは迷惑なんでしょう? 私に好きだなんて言われたら、迷惑だから、そんな風に遠回しに断ってるんでしょう」
 眼に熱いものが滲む。小文は泣くまいと唇を噛んだ。
「お嬢さま、三日前、手代さんがおっしゃったように、俺の家は貧しい百姓です。本当の親ではなく、棄て子だった俺を物心つく前から苦労して育ててくれた両親です。俺と二つ下の妹は家の前に棄てられていたと聞きました。手代さんの言うとおり、俺は氏素性も判らない人間なんです」
 治助が淡々と言う。小文は激しく首を振る。
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