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あおい風 あかい風
第4章 風
 その夜 大輝からラインがきた。
 「下にいる。出てこれる?」

 急いで 窓から外を見た。多分 あれだ。
 コンビニに行って来る、と嘘をついて 走り出た、大輝だと思われる影に向かって。
 たてかけた自転車のそばでスマホをみている。顔のところだけ 灯したように明るい。
 全力で走って ぶつかっていった。大輝は 碧がとびついたくらいでは びくともしなかった。

 「ん? どーした?」
 その優しい声に 泣きそうになる。
 近くの公園に向かって歩きながら 今日は 赤い自転車じゃあないんだ、と思った。

 「今日 あんまり元気がなかったから」
 今日だけじゃあない。ずっうっと元気ないのに。
 「今日は 赤い自転車じゃあないのね」
 「塾の帰りだから」

 試合の後でも 塾に行ったんだ。頑張っているんだ。それなのに 「元気がない」と 心配して会いに来てくれたんだ。
「やりたいことがあるから」 大輝はこれからは 違うことを頑張っていくのだ。あの 無表情でこわいような顔をして。
 お荷物にならないようにしなくては。

 公園で 並んでブランコにのった。
 「今日の松本さん すごかった。さすが 自慢の先輩だと思った」
 「自慢の恋人じゃ なくて?」

 何を言っても 何を聞いても ちっとも楽しくならない。
「キスしてもいいですか?」
 そんなこと聞くと ほんとうに泣くから。

 大好きな唇が おりてくる。こすりあわせたあと ゆっくり重なる。こうしてほしかった。これからも こうしてほしい。

 「キスが好きなわたしは だめ?」

 大輝が 抱きしめてくれる。こうしてほしかった。ぎゅって もっと ぎゅうって抱きしめてほしい。
 「碧といると だめだな」
 なにがだめなのかわからないけど。
 「送っていくよ」
 家の前まで来て
 「よびだして ごめん」
  ぶんぶん首をふると ほっぺたをつまんで 「おやすみ」と言って 自転車で帰ってしまった。

 幻のように 大輝がきえた。
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