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Memory of Night 2
第13章 投影

九時を少し過ぎた頃。春加は一人、ステージ脇の小さな物置部屋にいた。そこは六畳ほどのスペースしかなく、音響や照明を操作するための機材が設置されている。ショーで使用する道具も乱雑に詰められているため、実際のスペースは四畳にも満たない場所だった。だから通称物置部屋。
イベントは八時頃、閉幕を迎えた。トークとポールダンス、ちょっとしたステージ上でのダンスも含め三十分ほどの短い時間ではあったが、ハードな演技であるはずのポールダンスを一人で、しかもたったの六日前に突然代役を頼まれたというのを考慮すれば、充分すぎるはずだ。
ショーを終えると、歓声が上がった。そして昔よく店に来てくれていた客たちから、たくさんのチップや抱えきれないほどの花や手土産を貰った。
最初はもちろん丁寧に顔見せや礼をしてまわっていたが、喧騒の中の挨拶回りは疲れてしまい、春加は逃げるようにこの場所に入ったのだった。客が引くまでしばらく隠れているつもりでいた。
上着を羽織り、埃だらけの椅子に腰かけて、何分経った頃か。
突然、静まり返った室内にノックが響いた。視線だけを向け返事はせずに無視していると、正面のドアが開いた。

