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Memory of Night 2
第18章 人魚姫

「ーーごめん、とっさの嘘。叔母さんに心配かけるかなと思って。ところで宵、浮き輪片付けた?」
「……浮き輪?」
「君が膨らませてたスイカ模様のやつ。ビニール紐で縛って海に浮かべたあと、帰る時引きあげた?」
「やべ、忘れてた」
「俺もすっかり。ーー明ちゃん、それ取りに海に行っちゃったんじゃないかな? と思って」
宵と大山の間に微妙な沈黙が流れる。
「……台風来んのに?」
しかも夜。こんな危険なタイミングでわざわざ? とも思ったが、明の真面目さを考えれば安易に否定もできなかった。
「……俺、電話してみる」
言いながら、大山はすでにスマホを耳に当てていた。
呼び出し音。そのまま切らずにいると、不意にコールが切れた。
「あか……っ」
「『ただいま電話に出ることができません。ピーッという発信音のあとに』」
「くそっ」
大山にしては珍しく、乱暴な文句を吐き捨てた。
「……俺が悪いんだ! さっきあいつを引き止めなかったから……」
言うやいなや、大山は勢いよく部屋を飛び出していく。
「お……」
「探してくる!」
呼びかける間もなかった。
宵もすぐさま明の連絡先を探し電話をかけた。同じように留守電。一度切り再びかけたが、同じく留守電だった。
「明、今どこ? ……留守電聞いたらすぐ折り返して」
仕方なくメッセージを残し、通話を切った。
「こんなに鳴らして出ないのもおかしいね。君じゃあるまいし」
「……うるせー。とりあえず海行くか」
思い当たる場所が海しかないなら、そこに行ってみるしかない。
二人も部屋を出た。
不意に民宿の玄関に古い懐中電灯を見つけ、晃が手に取る。
「真っ暗だろうし、借りてこうか」
「そうだな」
大山を追い、急いで海へと向かった。

