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Memory of Night 2
第24章 姫橋祭

「でも、一年先じゃ遅いんだよ。明、高校卒業したら県外の有名な製菓の専門学校に行くっていうし、遠距離確定なんだ! だから離れる前に……!」
大山の言葉に、晃は内心どきりとした。
「へー、そういえば前言ってたな。パティシエになりたいって」
「俺は地元の大学行くつもりだから、せっかく付き合えたのに離れちゃうんだ」
晃は無意識のうちに、大山から視線を逸らしていた。
そろそろ、言わなければ、と思っていた話題だったからだ。
ふと正面を見ると、明がお茶を両手に抱え、走っていた。
戻ってきてしまった。
「ま、続きはあとでな」
「ああ、さんきゅ」
小声で呟く宵に答え、大山は明の元に駆けていく。
明の腕の中には、ペットボトルのお茶が四本あった。
日が徐々に傾きつつあった。もう夕刻だ。西陽が明のオレンジ色の浴衣を、より一層艶やかに染め上げていた。
「みんなの分も!」
眩しさに、晃はぼんやりと明と大山を見つめた。
「ーー晃?」
隣で宵が顔を覗いてくる。
ーー言わなければ、と思う。
いつまでも引っ張ったって仕方がない。隠していても、いずれバレて
しまうことだ。
「もう少し暗くなったら、二人きりになりたいな。……聞いてほしい話があって」
ずっと話そうと思っていた。タイミングを見計らうふりをしながら、この話題に触れるのを避けていたのも確かだ。だが、もしかしたらなんとなく、察してくれていたのかもしれない。
「うん、はいよ」
晃の問いかけに、宵は小さく頷いた。

