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Memory of Night 2
第31章 来訪者

父には桃華しか見えていなかったはずだ。それは死ぬ直前まで変わらなかったんじゃないかと思う。
仮に志穂が一方的に秋広を好きだったとしても、妻子がいる男に手を出すだろうか。そこまで積極性があるとは思えなかった。秋広だって、家族のことを隠して肉体関係を持つような不誠実な男ではないはずだ。では、一夜の遊びだろうか? 二人の性格を考えれば、それこそあり得ない。性的な遊びなどするとは思えなかった。
だが志穂は病院で、確かに寝たと言った。泣きじゃくりながら自分を抱きしめ謝っていたあの日の告白に、嘘や偽りはなかったように思う。
志穂と秋広がどういう間柄だったのか、直接志穂に訊いたことはなかった。訊けるはずもなかった。志穂から語ることはないし、触れてほしくない話題のはずだ。
志穂は長い間入院していた。辛い闘病生活を送っていたのだ。ようやくそれを乗り越え、弘行と結ばれ、普通の女性としての幸せを手にすることができたのに、今さら蒸し返すような話題ではない。
鎌首をもたげ始めた疑問にそっと蓋をし続けてきたのに、ここのところずっと、胸の奥のざわつきが消えない。
ーー思い返せば、春加が現れてからだった。彼女はいったい何者なのか。

